第3回例会の記録(ZOOMによりオンラインで行われました)
中野富雄先生 5年総合「高円寺の街をよりよくしよう~発見!自分たちの高円寺阿波おどり~」
2年間にわたって行われた総合の実践について、指導案、ブックレット第12集、授業記録、板書、子どものノート、子どもの作品、授業の映像、総合の発表の映像をもとに話し合いました。
2020年10月17日(土) 14:00~17:00
① 参加者の自己紹介と近況報告
② 授業者より実践報告
③ 授業の映像を見る
④ グループ討議
⑤ 全体討議
〈話し合われた内容〉
☆合意形成をどう進めるか
☆子どもの学びをどう支えるか
~グループ討議(筆者の参加したグループで話し合われた内容です)~
○Kくんの「治安」という考えから、「ソーシャルボンド理論(社会的絆理論)」を連想した。阿波おどりで高円寺の人達の絆が深まることが、治安をよくしている側面があるのではないか。「治安」について追求することも価値はあるのか考えさせられた。Kくんが、「ゴミ問題よりも優先順位の高い問題だ」と考えて、「治安」を主張しているのか、自分自身が人と対立してしまうという自分の問題意識から「治安」を主張しているのか知りたいと感じた。
○前時の授業の様子を実際に見たが、注目児のKくんは、クラスの中でのポジションを見える形で出していて、クラスの子どもたちは、Kくんに寄り添おうとしていた。Kくんの思いをひもとこうとして、ストレスももっているし、どう合意形成をはかるべきだったのだろうか。
○教師の立場は複雑。単純な「治安」対「ごみ問題」ではなく、「ごみ問題」の中でも、Kくんの思いをくみ入れようという子どもと、Kくんの考えはぬきでやっていきたい子どもに分かれている。それぞれの思いを、背景を聞くところが大事だと思う。
○周りの子の、Kくんを特別視する見方が強まっている。Kくんはこういう状況を楽しんでいる。自分だったら、一回話し合いを切ってしまう。明確な理由がないと合意形成できない。でも、Kくんのおかげで学びは深まっている。
○授業後の映像から、Kくんがうれしそうにクラスの子の中の輪にいたところから、Kくんがいてくれるとうれしいという気持ちが伝わってきた。ゴミ問題の具体がないところが難しくしている。いったん切って、一回それぞれ調べてみると違う視点が出て話し合いが進むのではないか。
○Kくんの思いを全員で考えてみて、一回Kくんの思いにそってすすめてみることはできるか?
→先生の意図を感じてすすめるという形になって、子どもたちの思いですすめることにはならないのではないか。子どもたちの納得にはつながらないのではないか。
○合意形成をするときに大切にしていることはあるか?(自分の実践の中で)
→「カレー」と「うどん」でどっちにしようか対立しているときに「カレーうどん」という結論があるように、二つの対立した意見を合わせた合意を生むことができるか、最初に子どもたちが見通しをもてるか考えられるようにする。「カレーうどんにできそう?」、「カレーうどんにするのは厳しそう?」
~全体討議~
○最後までKくんに付き添おうとしているところがすごい。自分だったらここまで粘ることができるのか自問しながら実践を聞いていた。そして、本当に合意形成は必要なのか考えさせられた。Kくんがいたことによって思考が深まっているので、クラスの子どもたちにはプラスになっていると思った。
○それ(Kくんの主張している「治安」について追求すること)をやるとどんな学びがあるのか。Kくんの思いを聞きたい。これを目指すとどういう価値がある?ということを子どもたちに聞きたい。
○価値という面では、「高円寺の阿波おどり」について追求することが「よりよい地域の在り方について考えることができる」という価値があるとともに、Kくんの主張について考えることにも、自分と違う考えを理解しようとする他者理解、多様性を大切にした社会をつくっていく上で大切なことを学ぶという価値があるのではないかと感じた。
○合意形成の中には、他者理解、自己理解、・・・たくさんの価値が含まれる。授業記録「31T 納得するには、活動をKくんに近づけるか、Kくんがこっちに来るか、それか、幅を広げるかだよね。」、「32M Kちゃんがこっちにくることは、ないぞ。」、「38T じゃあ、何をやってても・・・」、「34M 23人がGちゃんの方に行くわけには、いかないじゃないですか。」、「それは、いかないよね。Kも来るわけないよね。」、「36H だったら・・・」、「37M どっちも入る範囲を広げる。」、「38T 広げる。それでも、あれには、つながるんだよってことを分かってもらえばいい。」、「39M 最終的に、高円寺の長の長みたいなのあったじゃないですか。あれの前にKちゃんは何をしたいんだろうってことですよね。(H あー)Uはゴミを減らしたいけど、Kちゃんは何をしたいのか。で、その治安をよくするために、何をすればいいのか・・・」とMさんは、Kちゃんがこっちにくることはないといいつつ、どう合意形成をしていけばよいか考えている。そして、Mさんのノートがすごい。「私の今の気持ちは前と変わらず、「『たくさんの人への情報発信』、『ごみ問題の解決』をしたいということです。でも、今日の話し合いでKくんやみんなの意見を聞くと、少し考えが変わりました。私は、ごみ問題と情報発信だけに目を向けていたけれど、そうではなく、『よりよい高円寺』というテーマの下でごみ問題があり、それをやることによって、高円寺地域、高円寺阿波おどりが良いものになるということだったのです。このようなことから私たちは、高円寺地域、高円寺阿波おどりを良くするために、治安を良くし、治安を良くするために、ごみ問題や落書き、けんかなどの小さい問題があり、その問題を解決していけばいいと思います。その問題の中でも、毎年6年生がやっているごみ問題から解決していって、そこから広げていけばいいと思います。」Mさんは、Kくんの考えから自分の考えを広げている!
○「ごみ」⇔「治安」という話し合いがどうなっていくのか、板書でどうつなげることができるのか、できることがあったのではないか。また、子どもが気持ちを解いていくとき、それは、分かってもらえたときだったということがあった。Kくんのことを分かってあげるということが大切だったのではないか。言葉の交流と情の交流が大切なのではないか。
○Kくんがかわいそう。Kくんに変わってほしいという価値観が他の子どもたちになったのでなないか。異端は異端のままじゃだめなのか。自分を受け入れてもらったことで安心できる。そこが合意形成につながるのではないか。自分だったら、Kくんの思いをたくさんしゃべってもらう!その上で多数決でもいいのではないか。
○合意形成をはかるために、板書を整理したほうがいいのではないか。そうしたほうが、合意形成につながったのではないか。
○考えを表現出来ない子もいる。Kくんも表現するのが苦手なのではないかと思う。Kくんが書いた、「Kくんの考えるよりよい街」の図から考えるという方法もあったのではないか。
~授業者 中野先生より~
○教師人生前半の全力!!
○単学級なので、Kちゃんを子どもたちは6年間かけて受け止めていっている。
○人間関係の構造化はすすんでいて、それを打破したかった。
○「一緒にやることを合意する」のか、「別々にやることを合意する」のか、「決まらなかったらそれはそれでいい」と考えていた。
○Kちゃんが何にひっかかっていたのか、理解できずに終わった。
○絶対に決めよう(合意形成しよう)と思ってやった授業の板書がブックレットのP45の板書。(とてもシンプルな板書)全体に決めようとしたとき、板書が変わった。
○「多様でいいとき」と「一つにならないとだめなとき」その両方を経験してほしかった。(結局、「一つにならないとだめなとき」は経験できなかった)
~このクラスで学び中学生になった子へのインタビュー映像~
○「歩いていると高円寺のいいところを見つけようとするようになりました。」
○「正直大変だった?(総合の授業について)」→「大変でしたよー!」
○「Kくんと一緒に話し合えたことはためになりましたか?」→「ためになりましたよ。理解が深まったし、いろんなところから捉えられるようになりました。自分たちの考えが深まったと思いました。」
~筆者が感じたこと~
自分は今年度、ちょうど5年生を担任している。自分の思い通りにならないと、暴言をはいてしまったり、暴力をふるってしまったり、言葉で相手を責めて思い通りにしようとしたりする子どもたち、仲間と完全に距離を置いて、相手を理解しようとしない子どもたちに、自分と違う意見を受け入れられるようになってほしいという思いで、ちょうど昨日、国語の「よりよい学校生活のために」という単元で、「(休み時間に行う)学級遊びを希望者で行うべきか全員参加で行うべきか」で話し合いを行った。対立する2つの意見から、新しい3つ目の考えを導きだしてほしいと考えていた。しかし、実際に話し合いが始まると、お互いの意見を否定し合い、3時間話し合ったうち、最初の2時間はほとんどけんか状態になってしまい、異なる主張をする子を責め始める子も出て必死で止めて叱るという展開になってしまった。対立する意見を乗り越えようと3つめの案を出した子が一人いて、3時間目はそこから解決策を決めて終えることができたが、異なる意見、多様な意見を認め合えるようになることへ難しさを感じていたところだったので、「合意形成」について、子どもたちの学びの中から、先生方とKくんについて話し合う中で、自分がこれからクラスの子どもたちとどのように合意形成をはかっていけばよいのか考えさせられた。
授業の映像を見たときに、例えば、20Yくんは、意見は対立しているのに、Kくんへの言葉、語り口にKくんへの優しさを感じた。「自分の意見を理解してほしい」、「相手の意見は間違っている」から、「相手の意見を理解したい」、「相手の意見の~がいいな」と自分のクラスの子が変っていってほしいと中野先生のクラスの子どもたちの様子を見て思った。そして、意見が違うから排除する、意見を直させるのではなく、意見が違っても受け入れ共に生きていく方法を子どもたちと粘り強く見つけていきたいと感じた。
Kくんのこと、Kくんと他のことの関係、Kくんとの交流の中から広がる子どもたちの学びについて、先生方と話し合えた時間はとても温かな、優しい時間でした。中野先生の全力と、自然体が子どもたちの意欲と自然と仲間に寄り添う姿勢を生み出していると感じました。中野先生、本当にありがとうございました!!
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